
1400円カットで知られるQBハウスが、新たに社内コミュニケーションアプリ「Qプラ」を導入しました。目的は、店舗間を超えたつながりの強化と社員定着率の向上。今回の事例は「人材不足に悩むサービス業」にとって大きなヒントを含んでいます。
1. 背景:大企業でありながら“孤立感”が生まれる構造
QBハウスは国内外700店舗以上を展開し、社員は2800人を超えます。しかし、1店舗あたりのスタッフは4~5人程度。
その結果、
- 他店舗の状況が見えにくい
- 情報格差が生まれる
- 「大企業に属している」という実感が薄い
といった課題が顕在化していました。
従来は紙の社内報を配布していましたが、スピードや浸透力に限界があり、忙しい現場に届きにくかったのです。
2. 解決策:「Qプラ」という社内SNS
新たに導入された「Qプラ」は、
- 全従業員がスマホで利用可能
- 社長や本部からの情報発信
- 社員インタビュー、店舗の事例紹介
- カットや接客ノウハウの動画配信(Eラーニング機能付き)
といった機能を備えています。
特徴的なのは「双方向のやり取りが可能」な点。
リアクションやコメントができるため、単なる一方通行の社内報から「従業員同士が関わり合う場」へ進化しました。
3. 成果:定着率改善と“人への投資”の強化
QBハウスはこれまでも給与制度の改善や教育制度に力を入れ、退職率を 10.3% → 6.5%(2023〜2025年) へと大幅に改善。
Qプラの導入は、さらに「横のつながり」を補強し、安心感や帰属意識を高める施策として位置づけられています。
理美容業界はAIや機械に代替されにくい、人そのものが価値を生む業界。だからこそ「人材定着」が企業競争力そのものです。
4. 考察:採用・人材業界への示唆
今回のQBハウスの事例から見えるポイントは次の通りです。
- “小さな単位”で働く業態ほど、横のつながりが欠けやすい
→介護・保育・飲食などでも同じ課題がある。 - 人材確保だけでなく、定着施策の比重が増している
→採用に投資するだけでは限界、社内コミュニケーションの整備が離職防止に直結する。 - テクノロジーは「人を置き換える」だけでなく「人を支える」方向に活用できる
→Qプラのように情報格差を埋め、心理的な孤立を減らす仕組みは今後ますます重要。
5. まとめ: “人を辞めさせない”ための投資へ
理美容に限らず、サービス業全体が直面する「人手不足」。その解決は、採用広告を増やすことではなく、既存社員を大切にし、働きやすさを高めることにあります。
QBハウスの「Qプラ」は、単なる社内SNSではなく、
- 帰属意識を高め
- 学びを共有し
- 社員の声を拾い上げる
「人材定着プラットフォーム」へと進化していくでしょう。
採用・定着に悩む他業界の企業にとっても、大きな参考になる取り組みです。
あとがき(採用の窓口の視点から)
私たち「採用の窓口」でも、多くの企業の採用相談に触れる中で感じるのは、「採用の成功」と「定着の成功」は切り離せないということです。
求人広告や採用手法を工夫しても、入社した人が定着しなければ、結局また採用コストがかかってしまいます。
今回のQBハウスの事例は、採用後のフォローや社内コミュニケーションを強化することが、いかに離職率を下げ、結果として採用効果を高めるかを示しています。
採用の窓口では、求人手法の選定だけでなく、こうした 「人を活かし、辞めさせない仕組み」 にも目を向けながら、企業の採用成功をサポートしていきたいと考えています。